平成26年度 文部科学省 成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進事業
「介護分野の外国人就業者の雇用を促進する養成プログラムの開発と実施」

事業概要

(1)少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少

国立社会保障・人口問題研究所の報告(「日本の将来推計人口」平成24年1月推計)に拠れば、日本の総人口は、平成60年(2048年)が1億人を割って9913万人、平成72年(2060年)が8674万人と推計され、現在の3割減になる(下図)。

日本の総人口将来推計

そして、同報告に拠れば、日本の生産年齢(15~64歳)人口は、平成22年(2010年)が8174万人、平成72年(2060年)が4418万人と推計され、現在の45.9%減になる。それに対し、老年(65歳以上)人口は、平成72年(2060年)に3464万人になり、総人口の39.9%に達すると推計される(下図)。

日本の生産年齢人口と老年人口の将来推計

このような状況のままでは、介護業界をはじめとする様々な業界で、人材不足が深刻化することは容易に予想できる。

(2)介護業界における人材不足の深刻化

厚生労働省 社会保障審議会 介護保険部会(第47回・平成25年9月4日)の資料「介護人材の確保について」に拠れば、平成24年(2012年)の介護職員は約149万人であるが、団塊世代が75歳以上になる平成37年(2025年)には237~249万人の介護職員が必要になる。そして、このような状況に対応するべく、毎年6.8~7.7万人の介護人材を確保してゆく必要があると推計される。それにも拘らず、介護業界では、平成23年(2011年)の離職者が24万人に上り、必要数の確保が難しい状況にある。その主な理由として、介護職員は、苛酷な労働の上に専門的な知識・スキルが求められるのに比して給与・報酬の低いことが挙げられる。

(3)経済連携協定(EPA)による
         インドネシア・フィリピン等からの介護職員受け容れにおける問題

日本は、インドネシアやフィリピンからの看護師・介護福祉士候補者の受け容れを実施している。インドネシアからは日・インドネシア経済連携協定に基づいて平成20年(2008年)から、フィリピンからは日・フィリピン経済連携協定に基づいて平成21年(2009年)から、受け容れが開始された。そして、現在、ベトナムからの候補者の受け容れに向け、政府部内とベトナムの間で調整が行われている。

インドネシアからの介護福祉士候補者(以下「候補者」)の受け容れは、インドネシアの高等教育機関(3年制以上)を卒業し、インドネシア政府による介護福祉士の認定を受けた者が対象になる。訪日前後に各6箇月の日本語研修等を受けた後、日本国内の介護施設に就労するか、そこで研修を受ける。そして、4年目に介護福祉士の国家試験を受験し、合格すれば(3年毎の更新があるものの)日本で介護福祉士として働き続けることが可能になる。フィリピンからの候補者の受け容れについても同様である。

ただし、この制度には、介護福祉士国家試験の受験機会が一度に限られるという問題がある。そこで合格できない場合、それ以上は日本に滞在できず、帰国を余儀なくされる。(*1)

この一度だけの受験で合格することが海外からの候補者にとって非常に難しいことは、想像に難くない。まず、介護福祉士国家試験は、日本語で受験せねばならない。候補者は確かに、日本語の研修を受けている。しかし、介護分野には専門用語も多く、それを日本語で学習することは極めて困難である。しかも、その介護施設での研修は、前述したような当該業界における人材不足のため、「就労」という形で行われることが多く、充分な研修時間が用意されていると言い難い。このような状況の中、日本人を含む全受験者の合格率が64.6%(第26回試験・平成26年実施)であるような介護福祉士国家試験に海外からの候補者が合格することは、至難の業である。

さらに、介護福祉士国家資格を取得した後も、日本語によるコミュニケーションの困難や生活習慣の差異等により、日本での生活やキャリア・アップに大きな支障が出てもいる。この制度は本来、人材不足への対処を目的としたものでない。しかし、医療・介護サービスの安全性の確保や質の向上に繋がる取組であり、今後も候補者受け容れの拡大が期待される。

そこで、本事業では、以上のような実情を踏まえ、介護分野コンソーシアムの指導の下、外国人を対象にする、介護業界で就業するために必要な素養を醸成する教育プログラムを開発する。そして、それを実施することで、介護分野におけるサービスの質の向上と人材の育成を支援しながら、外国人就業者の雇用の促進を企図する。

(*1)不合格の場合でも、短期滞在で再度入国しての再受験が可能。

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